ネズミのかじった跡がある袋は食べられる?|保菌率と、袋では守れない理由
米袋の隅が、三日月のように欠けている。
中身は普通に見える。でも、かじったのがネズミなら、このまま食べていいのか分かりません。
調べても「早めに駆除しましょう」ばかり出てきて、目の前の米をどうするかは書かれていません。
東京都の資料には、その手前まで書かれています。袋という入れ物についての記述と、ネズミが病原体を持っている割合の実測値です。この記事では、その2つを並べます。
- 東京都の資料は「ビニール袋やダンボールに入れた状態ではかじられる」と書いています
- 感染は糞や尿の病原体が食品を汚染して口に入る経路で起こります
- 保菌率の実測はクマネズミ1.5%・ドブネズミ10%。必ず菌がいるわけではありません
- やること:中身の扱いを決める → かじり跡の位置から侵入口を探す → 容器を替える

かじられたのが1袋だけとは限らない、と気づいた段階の人もいます。
袋に入れてあったから安全、とはなりません。
東京都保健医療局の「都民のためのねずみ防除読本」は、食品の置き方をこう書いています。
食品は放置せずに、プラスチックや金属性の蓋つき容器やしっかりと扉が閉まる戸棚、冷蔵庫などにしまう。ビニール袋やダンボールに入れた状態ではかじられる
※出典:東京都保健医療局「都民のためのねずみ防除読本」(2026年8月30日確認)。以下、この資料からの引用は出典名を省きます
ビニール袋とダンボールが、名指しで外されています。しまう先として挙がっているのは、蓋つき容器・戸棚・冷蔵庫の3つです。
つまり、袋にかじり跡があるのは例外的な出来事ではありません。資料の側では、袋は最初から守る側に数えられていないということです。
中身に何が起きうるか
感染の経路も、同じ資料に1文で書かれています。
ねずみの糞や尿中に排泄された病原体が飲み水や食品を汚染し、経口的に人に取り込まれる場合があります
読むところは「糞や尿」→「食品」→「口」という順番です。ネズミが中身をかじったかどうかより、袋の中や周りに糞尿が付いたかどうかが問題になります。
かじり跡が小さくても、そこはネズミが口をつけた場所です。同じ場所を通ったなら、糞や尿も近くにあると考えるほうが自然です(ここは編集部の見方です)。
なお、この記事では感染症の名前や症状は扱いません。資料が書いている経路までにとどめます。
「必ず菌がいる」とも「いない」とも言えません。数字があります。
東京都保健医療局の「被害の実態」に、捕まえたネズミを調べた結果が載っています。
ネズミのサルモネラ保菌状況(加藤ら1998年の調査)
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| 捕獲場所 | 種類 | 保菌していた割合 |
|---|---|---|
| 東京都区内のビル | クマネズミ | 1.5% |
| 千葉県内の魚市場 | ドブネズミ | 10% |
出典:東京都保健医療局「Ⅲ 被害の実態」(2026年8月30日確認)。以下、この資料からの引用は出典名を省きます
かんたんに言うと、ドブネズミなら10匹に1匹です。クマネズミではもっと低くなります。
家に出るのは、どちらが多いのか
住宅で問題になるのは、保菌率の低いほうです。
同じ東京都の読本に、こう書かれています。
現在自治体が住民から受ける相談で、ねずみの種類が分かる相談のうち、9割以上がクマネズミによる被害です
東京の住宅でかじったのは、9割以上の確からしさでクマネズミということになります。つまり、当てはまりやすいのは1.5%のほうです。
ただしドブネズミが入る家がないわけではありません。資料はドブネズミの生息場所として、植込み、公園の地面、下水管、下水溝、ビルの低層階を挙げています。1階で、庭や下水に近い家なら、10%のほうも残ります。
この数字をどう読むか
ここからは編集部の判断です。
1.5%や10%は、「まず大丈夫」と言える低さではありません。かといって「必ず菌がいる」でもありません。当たり外れがある、という状態です。
判断が分かれるのは、そのためです。資料は「捨てなさい」とも「食べてよい」とも書いていません。書かれているのは経路と割合までで、そこから先は読む人が決めることになります。
編集部としては、かじり跡のある袋の中身は、口に入れない側で考えるほうが釣り合うと見ています。理由は、外れたときの損失が、米一袋の値段と釣り合わないからです。
起きたときの規模
同じ資料に、古い事件が1つ挙がっています。
1936年に浜松市で起きた、中学校の運動会で配られた大福餅による食中毒事件です。発病者は2,201名でした。ネズミが媒介したサルモネラ症の例として、資料が「最も有名」としているものです。
昔の話ですが、規模の目安にはなります。衛生状態が今とは違うので、そのまま現在に当てはめることはできません。
かじり跡には、もう1つの読み方があります。
資料は、かじり跡をラットサインの1つとして扱っています。
ラットサインの種類は、音、かじり跡、糞、足跡、体のこすり跡などです
そして、ラットサインから3つのことが分かるとしています。
- ねずみの外からの侵入経路
- 家の中のねずみの通路
- 家の中でねずみに使われる場所(餌場、営巣場所)
袋のかじり跡は、そこが餌場だという印です。そして、その袋にたどり着くまでの道が、必ずどこかにあります。
足跡とこすり跡については、見分け方まで書かれています。
足跡やこすり跡は、ねずみの体から分泌される脂分と汚れが、ねずみの通り道に付着してできるもので、特有の黒光りした跡になります
黒光りしている、というのが目印です。ただの汚れと迷ったら、同じ跡が線になって続いているかを見てください。線になっていれば通り道です。
餌場と巣になりやすい場所
資料は、場所も具体的に挙げています。
資料が挙げる、餌場と営巣場所になりやすいところ
| 区分 | 場所 |
|---|---|
| 餌場 | 台所、食品保管庫、居間など食べ物があるところ/生ごみの保管場所/仏壇の供物や花/ベランダの花/ペットの餌の置き場所/野鳥の餌台 |
| 営巣場所 | 天井裏、物置、家具の裏/押入やたんすの中/壁の中/テレビや冷蔵庫など電気製品の裏 |
かじられた袋を見つけたら、この表の場所を順番に見るのが次の一手になります。とくに冷蔵庫の裏は、餌場と巣の両方に近い位置にあります。
かじり跡以外のラットサインも一緒に探すと、位置がはっきりします。ふんの読み方はねずみのふんは大きさより場所で見ますにまとめてあります。
出た場所によって相手の種類が絞れることもあります。家に出るネズミの種類は3つで、体長ごとの居場所を扱っています。
かじられるのは食品だけではありません。
東京消防庁のまとめとして、資料にこう書かれています。
ねずみが原因であることが確認された火災は毎年12件ほど発生している
平成8年から15年の間に起きた、ねずみに起因する火災の総件数は97件です。そして火災による直接的な損害額は、年間約5,000万円に上るとされています。
どこから火が出たかも集計されています。
ねずみに起因する火災の主な出火箇所(平成8〜15年)
| 出火箇所 | 件数 |
|---|---|
| ビルのキュービクル(受変電設備) | 14件 |
| 台所 | 13件 |
| 飲食店舗内 | 13件 |
| 飲食店の調理場 | 10件 |
資料は、このあとに「その他、天井裏、電気室という順であった」と続けています。件数は本文に書かれていません
建物の用途では、店舗が33件(そのほとんどは飲食店)、住宅・共同住宅が22件でした。
住宅でも22件起きています。台所が13件で2番目に多いのも、袋をかじられた読者には近い話です。
冷蔵庫の裏が重なる理由
資料は、電気機器についてもこう書いています。
冷蔵庫やテレビなどの裏側は常に発熱して暖かいため、ネズミが布きれや紙などの巣材を持ち込んで巣を作りやすい。その結果、巣の近くでかじった電気コードが短絡したり、放熱板に尿がかかってスパークし、火花が巣に引火することがある、という説明です。
さきほどの表で、冷蔵庫の裏は営巣場所にも挙がっていました。餌場(台所)と巣(冷蔵庫の裏)と火元(電気コード)が、同じ数メートルの中に並びます。
天井裏まで手が届かない場合の考え方は屋根裏のネズミはバルサンでは駆除できませんにあります。
資料の対策は、薬ではなく環境から始まります。
環境的防除の柱は3本です。餌を与えないこと、巣材を与えないこと、出入りを防ぐこと。
資料が挙げる置き換え
| いまの状態 | 置き換える先 |
|---|---|
| ビニール袋・ダンボールに入れた食品 | プラスチックや金属性の蓋つき容器、扉が閉まる戸棚、冷蔵庫 |
| 出したままの生ごみ | 蓋つき容器に入れ、蓋をしっかり閉める |
| 出したままの布類・衣類 | 収納ケース(ダンボールは不可) |
| 夜も置いたままの供物・ペットの餌 | 夜には片付ける |
ダンボールが2か所に出てきます。食品を入れる先としても、布をしまう先としても外されています。ネズミにとっては、かじれる材質であり、巣材でもあるためです。
穴は1.25cmから
出入りできる穴の大きさも数字で出ています。
出入り可能な穴の大きさ 1.25cm
1.25cmは、指1本が入らないくらいの幅です。ふさぐ材料として資料が挙げているのは、不燃性のパテ、モルタル、金属たわし、亀甲金網です。
かじり跡の位置から壁沿いにたどると、この大きさの穴が見つかることがあります。
資料は、ふさぐ場所ごとの方法も挙げています。
資料が挙げる防そ修繕の例
| 場所 | 方法 |
|---|---|
| 雨戸の戸袋 | 中のすき間に、まるめた亀甲金網や金属たわしを突っ込んでふさぐ |
| 電線導入部 | 外壁を貫通している部分のすき間に、不燃性のパテを詰める |
| 屋根の下 | 垂木と外壁の間にすき間があれば、金網を折って差し込むか角材を入れる |
| 通気口 | 格子の幅が1.25cm以上なら、1cm位のものに取り替える |
| 基礎のすき間 | モルタルなどを詰める |
資料自身が「侵入経路さえ見つけられれば、修繕は手近にある材料で比較的簡単に行うことができます」としています。難しいのは、ふさぐことではなく見つけることです。
ただし同じ資料は、天井裏や高所などの危険な場所については専門業者に依頼したほうがよい場合もある、と付け加えています。
自分で置ける道具を使って通り道を確かめる方法は、ネズミの粘着シートは餌を置くと逃げられますにまとめてあります。
やること:
- 食品を蓋つき容器か冷蔵庫へ移す
- かじり跡の位置から壁沿いに1.25cmの穴を探す
- 見つけた穴を金属たわしや不燃性のパテでふさぐ

壁の中や天井裏に続いていそうなときは、自分でたどれるのはそこまでです。
「食べてよい」と書いた公的資料も、「捨てなさい」と書いた公的資料も確認できませんでした。
書かれているのは、糞や尿の病原体が食品を汚染して口に入る経路があることと、保菌率がクマネズミ1.5%・ドブネズミ10%という実測です。
編集部としては、口に入れない側で考えるほうが釣り合うと見ています。ただし、これは資料の記述ではなく編集部の判断です。
「洗えば大丈夫」という記載は、どちらの資料にも確認できませんでした。
資料が扱っているのは保管の方法までで、汚染された食品の処理には触れていません。判断がつかない場合は、お住まいの自治体の保健所へ相談してください。害虫や害獣の相談先の使い分けは害虫駆除はどこに相談する?にまとめてあります。
それが普通です。資料は、ねずみが活動するのは主に人の活動していない夜中なので、ねずみ本体を確認することは困難だとしています。
かわりに残るのがラットサイン(音、かじり跡、糞、足跡、体のこすり跡)です。姿を探すより、跡を数えるほうが早く進みます。
捨てる範囲について書いた記載は確認できませんでした。
資料にあるのは、これから置く場所の指定(蓋つき容器・戸棚・冷蔵庫)までです。同じ棚にあった他の袋についても、資料からは判断できません。
資料の環境的防除は3本柱で、餌を与えないことは、そのうちの1本です。
残る2本は、巣材を与えないことと、出入りを防ぐことです。容器を替えるのは餌の側だけなので、1.25cmの穴が残っていれば入られる状態は変わりません。
駆除まで含めた全体の流れはネズミ駆除の方法を完全解説にあります。
かじり跡は、2つのことを同時に教えています。
- 中身については、資料は経路と保菌率までしか書いていません(クマネズミ1.5%・ドブネズミ10%)
- 入れ物については、ビニール袋とダンボールが名指しで外されています
- 跡そのものはラットサインで、侵入経路・通路・餌場を教えます
- 袋以外のかじり跡には火災97件・年約5,000万円という記録があります
- ふさぐ目安は1.25cmです
今日やること:
- 中身の扱いを決める(判断がつかなければ保健所へ相談する)
- 残りの食品を蓋つき容器か冷蔵庫へ移す
- かじり跡の位置から壁沿いに穴を探す

穴が見つからないまま、また別の袋がかじられているという段階なら、通り道ごと見てもらうほうが早いです。

