ネズミの天敵に猫は入るのか|資料が挙げる3種と、島でイタチを放した記録
ネズミが出たとき、「猫を飼えば減るのでは」という考えが浮かびます。
そこで公的資料に当たりました。東京都が出している防除法の分類表には、天敵を使う手段がちゃんと枠として入っています。
ですが、その枠に名前が挙がっているのはイタチ・フクロウ・ヘビでした。猫は入っていません。
さらに調べると、天敵を実際に放した島の記録がありました。この記事では、その2つを並べます。
- 東京都の防除法の分類表が天敵として挙げるのは、イタチ・フクロウ・ヘビ。猫は入っていない
- 天敵を実際に放した島がある。伊豆諸島のイタチで、試験放獣ではネズミ駆除の効果は認められなかった
- 一方でオカダトカゲは、移入前の千分の一から万分の一まで減った
- いますること:猫に任せず、通り道と入口を見る

天井裏で音がしていて、猫が届かない場所にいる。そういう段階なら、範囲を見てもらうところから始められます。
イタチ・フクロウ・ヘビです。
東京都産業労働局が「野ネズミ・モグラの防除法」という資料を出しています。畑の野ネズミが対象で、家に出るネズミの資料ではありません。ただし、防除の手段をきれいに3つへ分けています。
野ネズミの防除法の分類(東京都産業労働局)
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| 手段 | 駆除 | 被害回避 |
|---|---|---|
| 物理的手段 | 捕そ器(パチンコ、ネズミ取り、カゴワナ)/粘着板 | 侵入防止ネット/防護ネット/音・音波 |
| 化学的手段 | 殺そ剤(毒餌)/不妊剤 | 忌避剤含有 侵入防止ネット/忌避剤 |
| 生物的・耕種的手段 | 天敵(イタチ、フクロウ、ヘビ等)/輪作/圃場の整備(除草) | — |
出典:東京都産業労働局「野ネズミ・モグラの防除法」。2026年8月29日確認。項目名は資料の表記のまま。
かんたんに言うと、天敵を使う手は、防除法の1つとしてちゃんと枠があるということです。「そんな方法はない」という話ではありません。
そのうえで、枠の中に名前が挙がっているのがイタチ・フクロウ・ヘビの3つです。
分類表にも、家ネズミの手順にも出てきません。
上の資料で「ネコ」という字が出てくる箇所は1つだけです。殺そ剤の商品名「メリーネコ」(有効成分はリン化亜鉛)でした。天敵の欄ではありません。
家に出るネズミのほうも見ました。東京都は防除指針の巻末に、住民から寄せられる質問への回答集を付けています。
そのうち「ねずみ防除の技術的質問」は全部で11問あります。中身は次のとおりです。
- トラップの配置数と配置方法
- 毒餌が食べられないとき
- 隙間をふさいだあと/ふさぎきれないとき
- 忌避剤/超音波の機械
- 追い詰めたときの捕らえ方
- 屋外の駆除/シャッターからの侵入/ドブネズミの巣穴
11問のどこにも、猫を使うという選択肢は出てきません。

効かないと書いてあるのではなく、選択肢として並んでいません。
「猫では減らせない」と書かれているわけではない点は、押さえておいてください。分かるのは、資料が駆除の手段として猫を挙げていない、というところまでです。
同じ回答集に、猫がネズミを捕ったときの質問があります。
Q12 猫がねずみを捕ってきたが、猫やその飼い主が病気にならないか。
A:猫の場合は、原虫のトキソプラズマや猫条虫などに感染したネズミを食べれば感染する。人の場合には、病原体を保有したねずみに直接触れれば感染する恐れはある。また、猫が捕まえたねずみを引きずり回したりする過程で、食品などに触れ、そこで汚染した食品を口にして感染が起きるという可能性も考えられる。
※出典:東京都「行政担当者のための ねずみについてよくある質問&回答集」(東京都ねずみ防除指針 巻末資料)Q12。2026年8月29日確認。
猫にネズミを捕らせたときに書かれているリスク
| 誰に | 何が起きうるか |
|---|---|
| 猫 | 感染したネズミを食べると、トキソプラズマや猫条虫などに感染する |
| 人 | 病原体を保有したネズミに直接触れれば感染する恐れがある |
| 人(間接) | 猫が引きずり回す過程で食品などに触れ、その食品を口にして感染が起きる可能性 |
出典:東京都「行政担当者のための ねずみについてよくある質問&回答集」Q12より編集部が整理。2026年8月29日確認。
3つめが見落としやすいところです。猫とネズミに触れていなくても、経路が残ります。
捕ってきた個体の片づけ方は、ねずみの死骸を処理する5手順と、あとから来るイエダニの話にまとめてあります。
日本で実際に試された記録が残っています。
東邦大学がまとめた資料によると、伊豆諸島でイタチが放されました。
利島では昭和9年か10年ごろ、「ネズミによる農作物の被害を食い止めるため」に放獣されています。島の碑文には「著しい業績を残した」と記されているとのことです。
三宅島では昭和45年ごろからネズミ被害が深刻になりました。そして昭和51〜52年に、試験的に雄イタチ20頭が放獣されています。その後、1982年ごろに非公式な放獣も行われています。
ところが三宅島の試験放獣について、資料はこう書いています。
ネズミ駆除の効果や、野生鳥類、オカダトカゲへの影響はほとんど認められていない
※出典:東邦大学 理学部「伊豆諸島におけるイタチ導入:歴史と事実と教訓」。2026年8月29日確認。
碑文の「著しい業績」と、試験放獣の「効果は認められていない」が、同じ資料に並んでいます。どちらか片方だけを取り出すと、話が変わってしまいます。
ネズミより先に、別の動物のほうが動きました。
伊豆諸島で確認された変化(東邦大学の資料より)
| 生き物 | 変化 |
|---|---|
| オカダトカゲ | 移入前の千分の一から万分の一に激減 |
| アカコッコ | 約二分の一に減少 |
| サシバ | ほとんど見られなくなった |
| 昆虫類(オオヒラタシデムシ、ゴミムシ類) | 増加 |
出典:東邦大学 理学部「伊豆諸島におけるイタチ導入:歴史と事実と教訓」。2026年8月29日確認。
原因も確かめられています。1984年に調べたイタチの糞に、40〜80%の割合でオカダトカゲが含まれていました。そこから、イタチによる捕食が主な原因と判断されています。
資料の筆者は、教訓として次のような点を挙げています。一人の研究者や少数のグループの判断には限界があること。1つの場所に長く通い続けて兆候に気づくこと。広く情報や意見を交換すべきこと。

入れた側は、何が減るかを先に知ることができませんでした。
これは島の生態系での話で、家に出るネズミの話ではありません。ただ「天敵を入れれば片づく」という考え方が、実際にはどう転んだかの記録として読めます。
東京都は、毒餌箱を使うよう書いています。
殺そ剤を投与する場合、ばらまくとイヌ、ネコが喰うおそれがあるので、できるだけ毒餌箱を用いてほかの動物が摂取できないようにする。
※出典:東京都「行政担当者のための ねずみについてよくある質問&回答集」Q10。2026年8月29日確認。
猫がいる家では、毒餌をそのまま置く形が取りにくくなります。
参考までに、殺そ剤の性質も資料に書かれています。リン化亜鉛は「効き目が早く、3〜5時間で死亡する急性殺そ剤」とされています。クマリン系のほうは「累積毒性で、4〜5日間連続して食べさせる必要がある」とされています。
罠を使う場合も同じです。藤沢市の資料は、粘着シートに別の動物がかかったときの扱いを書いています。ペットがいる家では、置く場所を先に決めることになります。
資料が駆除の手段として挙げているのは、トラップ・毒餌・封鎖の3つです。
そのうち手を付けやすいのが粘着シートですが、置き方に条件があります。東京都は「粘着シートに餌は置かない方がよい」と書いていて、餌の周りは粘着しないぶん逃げられるためだと説明しています。
相手によって効き方も変わります。東京の住宅地で種類が分かる相談の9割以上はクマネズミで、市販の殺そ剤は「効きにくい」と都が書いています。
全体の流れはネズミ駆除の方法をまとめた記事に、業者へ頼む場合の比べ方は害獣駆除業者9社を料金の公表状況で検証した記事にあります。
自分でやる範囲を超えるのは、天井裏・壁の中・高所です。猫が届かない場所と、人の手が届かない場所は、だいたい同じところになります。

猫が見ている天井を、自分では開けられない。そこで止まっているなら、範囲を出してもらう段階です。
公的資料は、猫を駆除の手段として挙げていません。
東京都の防除法の分類表で天敵の欄に並ぶのは、イタチ・フクロウ・ヘビです。家ネズミ向けの質問集でも、防除の技術的質問11問に猫は出てきません。
東京都産業労働局の資料が挙げているのは、イタチ・フクロウ・ヘビの3つ(と「等」)です。
ただしこれは畑の野ネズミについての分類です。家に出るネズミの資料ではありません。
家のネズミで測った公的資料を、編集部では見つけられませんでした。
参考になるのは、天敵を実際に放した記録のほうです。伊豆諸島でイタチを放した試験では、ネズミ駆除の効果は認められなかったと報告されています。なおネズミの増え方については、東京都が「1年で9,434匹」という計算を否定しています。
東京都は、猫がトキソプラズマや猫条虫などに感染する可能性を書いています。
人については、病原体を保有したネズミに直接触れれば感染の恐れがあるとしています。さらに、猫が引きずり回す過程で食品に触れ、その食品から感染が起きる可能性にも触れています。
東京都は「ばらまくとイヌ、ネコが喰うおそれがある」として、毒餌箱を使うよう書いています。
猫がいる家では、毒餌を露出させて置く形は取りにくくなります。
ネズミの天敵として公的資料が名前を挙げているのは、イタチ・フクロウ・ヘビでした。猫は入っていません。分類表に出てくる「ネコ」は、殺そ剤の商品名だけです。
天敵を実際に放した記録もありました。伊豆諸島のイタチです。試験放獣ではネズミ駆除の効果が認められず、一方でオカダトカゲが千分の一から万分の一まで減りました。
猫に捕らせる場合も、感染の経路が3つ書かれています。毒餌との併用にも注意が要ります。
いまやることは3つです。
- 猫に任せる案は、いったん脇に置く
- フンや黒い汚れをたどって、通り道と入口を探す
- 粘着シートを通り道に置き、週1回は見に行く

猫がいてもいなくても、入口が開いていれば同じだけ入ってきます。

