キクイムシの駆除は穴に注入します|撒く時期は11月と4月中〜下旬
床の隅に、粉のような木くずが落ちている。
払っても、翌日また同じ場所に出ている。よく見ると、家具や床板に直径2mmくらいの丸い穴が開いています。
長野県の資料は、この状態をはっきり書いています。木くずを取り除いて虫孔があれば、ヒラタキクイムシに加害されていると判断できます、と。
ただし、ここで殺虫剤を吹きかけて終わりにはできません。木材の中にいる幼虫には届かないと、別の資料が書いているためです。この記事では、行政と研究機関の資料から、自分でやる手順と撒く時期をまとめます。
- 市販の殺虫剤は表面には効きますが、木材内部の幼虫には届きません
- やることは3つ:虫孔に注入 → 11月と4月中〜下旬に表面へ → 未塗装部を塗る
- 屋外からは来ません。原因のほとんどは家具や建材の持ち込みです
- シロアリとの違いは「乾いているか」。針葉樹材と心材は食べません

そもそもシロアリなのかキクイムシなのか、判断がつかないという段階の人もいます。
先に、いちばん大事なところを書きます。
京都市の資料は、殺虫剤の効き方をこう書いています。
幼虫も成虫も市販のスプレー式殺虫剤を吹き付けると死にますが、木材内部に生息する幼虫には、殺虫剤成分が届きません
※出典:京都市「衛生動物だより No.007 ケブトヒラタキクイムシ」(衛生環境研究所・2026年8月30日確認)。以下、京都市からの引用は出典名を省きます
吹き付けたものは死にます。ただし、それは表に出ている個体だけです。木材の中にいる幼虫には成分が届きません。
塗装についても同じ書き方です。
導管を埋める目的で塗装し、産卵を阻む方法もあります。しかし、木材内部に生息している幼虫や成虫を駆除することはできません
塗装は産卵を阻む手であって、中にいるものを殺す手ではないということです。
この節に付いている資料の見出しは、そのまま「難防除」でした。行政の資料が難しいと書いている相手です。
相手は1種類ではありません
家に出るキクイムシは、ヒラタキクイムシ科というグループです。
京都市が相談を受けたのはケブトヒラタキクイムシという別の種類でした。そして資料は、その種類について正直に書いています。
手元にはケブトヒラタキクイムシの生活史などを詳しく書いた文献がありません。恐らくはヒラタキクイムシに準じていると思います
分からないことを分からないと書いています。この記事でも、生活史の数字はヒラタキクイムシのものとして扱います。種類が違えば時期がずれる可能性は残ります。
なぜ気づくのが遅れるのか
見つかり方も書かれています。
幼虫は、乾燥した木材の内部で発育します。そのため、家具や床、壁面の周辺にフラスが出てきて初めて被害に気付きます
フラスとは、木くずや糞が混じったものを指します。粉が出てきた時点で、中では既に育っているということになります。
ここがこの記事の本体です。
長野県の資料が、防除の方法を3つ挙げています。順番もそのままです。
長野県が挙げる防除の3手順
| やること | |
|---|---|
| 1 | 木屑が噴出している箇所を発見したら、木屑を取り除いて市販のキクイムシ防除用殺虫剤を周辺部分に噴霧するとともに、付属のノズルを用いて虫孔にも注入します |
| 2 | 幼虫が材表面近くに移動してくる11月頃と成虫発生前の4月中〜下旬に殺虫剤を木材の表面に塗布または噴霧します |
| 3 | 塗装されていない部分をニス、ラッカーなどで塗装して産卵を防止します |
出典:長野県林業総合センター「ミニ技術情報 No.33 ヒラタキクイムシ」(平成13年8月・2026年8月30日確認)。以下、長野県からの引用は出典名を省きます
手順1の「虫孔にも注入」が抜けやすいところです。周辺に噴霧するだけでなく、穴の中へノズルで入れる、と書かれています。
準備するものは3つです。
- 市販のキクイムシ防除用殺虫剤(ノズルが付いているもの)
- ニスまたはラッカー
- 木くずを取り除く道具(刷毛や掃除機)
なぜ11月と4月中〜下旬なのか
時期が2回に決まっているのには理由があります。
この虫の1年の動きが、資料に書かれています。
ヒラタキクイムシの1年(資料の記述から編集部が整理)
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| 時期 | 起きていること | 手を打てるか |
|---|---|---|
| 5〜7月 | 被害材から2mm程度の円形の孔をあけて成虫が脱出。夜間に活動し、辺材部道管内に産卵 | 木くずが出るので気づける |
| 夏〜秋 | ふ化した幼虫が材内に食い進み、不規則な孔道を作る | 中にいるので届かない |
| 秋(11月頃) | 材表面近くに移動して越冬 | 表面に撒くと届きやすい |
| 翌春(4月中〜下旬) | 蛹になり、羽化脱出の前 | 出てくる前に撒ける |
出典:長野県「ミニ技術情報 No.33」(2026年8月30日確認)。時期の対応づけは編集部の整理です
資料は「この虫は1年1化で発生し、加害を繰り返します」と書いています。1年に1回しか世代が回らないので、居場所が分かっている2つのタイミングを狙うという組み立てになります。
かんたんに言うと、11月は「表面近くに上がってきたところ」、4月中〜下旬は「出てくる直前」です。
それでも中の分は残ります
ここは編集部の判断です。
手順1〜3を全部やっても、京都市が書いているとおり木材内部の幼虫には届きません。穴が増え続けるかどうかを、翌年の5〜7月に見ることになります。
原因の話です。ここは3つの資料が同じことを書いています。
まず長野県です。
ヒラタキクイムシは、乾燥した材だけを加害するため、屋外では見つかりません
そして、こう続きます。
ほとんどの被害発生原因は被害製品の持ち込みにあります
外から飛んで来たのではありません。すでに虫が入っている木材が、家に運び込まれたということです。
京都市の相談事例も同じ形でした。成虫の相談が4件、幼虫の相談が1件あり、いずれも外国で作られた家具に発生していました。ゴムノキを原材料にした合板の床板から出た事例もあります。日本に輸入されてから数か月で被害が出ています。
なぜラワン材なのか
食べられる木に条件があります。
京都市の資料は、木の構造から説明しています。木や草には導管という管があり、根から吸い上げた水分や肥料分の通り道になっています。広葉樹、とくにラワン材と総称される木材には、導管が太い種類が多いとされています。
その太い導管に産卵するというのが仕組みです。ふ化した幼虫は木材の中へ深く入り込み、成長すると脱出用の穴を開けて出てきます。
森林総合研究所も「いわゆるラワン材でとくに被害が激しい」としています。合板の床板や輸入家具に多いのは、この材が使われているためです。
森林総合研究所は、新築の家について書いています。
建材の段階ですでに加害されており、家の竣工後にそれが親になって脱出してきたわけです
※出典:森林総合研究所「森林の生き物 Q9」(国立研究開発法人 森林研究・整備機構・2026年8月30日確認)
新築後1〜2年の家で被害が多いのは、年1世代だからだとされています。建てたあとに入られたのではなく、建てる前から入っていたという説明です。
だから再発を防ぐのは買うときです
3つの資料が揃って書いているのは、同じ結論でした。
- 長野県:「家具類を購入する際に、防虫加工済みの製品を選ぶなど被害材を家屋内に持ち込まないようすることが最も大切です」
- 森林総研:「しっかり防虫加工のされた建材を使うことが大事です」
防虫加工はホウ素化合物の注入を指します。長野県は、この加工によって被害が問題となることは少なくなったが、「近年防虫加工されていない材が増加し被害が増えてきているようです」と書いています。
駆除したあとに何を買うかが、次の被害を決めます。
木を食べる虫なので、シロアリと迷う人が多いところです。
資料の記述で切り分けられます。
キクイムシとシロアリの違い(資料の記述から編集部が整理)
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| ヒラタキクイムシ | シロアリ | |
|---|---|---|
| 食べる木 | 乾燥した広葉樹の辺材部のみ。デンプンを多く含む部分 | 湿った木材を好む |
| 食べない木 | 針葉樹材、広葉樹材の心材 | ― |
| 屋外 | 見つかりません | 土壌などに生息 |
| 入ってくる経路 | 製品・建材の持ち込み | 地面や建物の外から |
| 出る穴 | 直径約2mmの円形 | ― |
| 成虫の見た目 | 茶褐色・体長2.2〜8.0mmの甲虫。夜間に活動 | ― |
キクイムシ側の出典:長野県「ミニ技術情報 No.33」(2026年8月30日確認)。シロアリ側は当サイトの各記事の内容をもとに編集部が対比したものです
「屋外では見つかりません」が、いちばん分かりやすい違いになります。庭で見かけた木の虫は、キクイムシではないことになります。
シロアリ側の話は別記事にまとめてあります。
シロアリ駆除は自分でできる?費用の相場や信頼できる業者の選び方
羽の生えたアリを見たのなら、そちらは別の見分け方になります。
なお、乾いた食品に湧く虫はまた別です。乾物や畳から出ているならシバンムシの駆除は発生源を捨てることを見てください。虫の大きさから絞るなら畳に小さい虫がいたらまず大きさを見るにまとめてあります。
被害の進み方に特徴があります。
材内を加害しても材の表面を薄く残すため、材表面からは被害が発見しにくく、被害が進むと見た目以上に材内がボロボロになってしまいます
表面は残ります。見た目は無事なのに、中だけが空になっていくという進み方です。
実際に起きた例も挙がっています。
- 家具の棚が抜けてしまった
- 床板が踏み抜けてしまった
木くずだけ掃除して穴を放置するのが、いちばん避けたい形です。1年1化で加害を繰り返すと資料が書いているので、翌年また同じ場所から出てきます。
業者に頼む判断ライン
自分でやる範囲を超えるのは、次の場合です。
- 穴が床板や柱にあり、家具のように動かせない
- 木くずの出る場所が年々増えている
- 表面を押すと沈む、たわむ感じがある
- シロアリかキクイムシか判断がつかない
いちばん下がいちばん多いと思われます。相手が決まらないと、打つ手も費用も決まりません。
どこに相談すればよいかは害虫駆除はどこに相談する?にまとめてあります。
長野県の資料が3つ挙げています。木くずを取り除いて虫孔にノズルで注入すること、11月頃と4月中〜下旬に表面へ塗布または噴霧すること、未塗装部をニスやラッカーで塗ることです。
ただし京都市の資料は、木材内部の幼虫には殺虫剤成分が届かないとしています。1回で終わる前提は置かないでください。
アルコールについて書いた資料は、確認できませんでした。
資料が挙げているのは「市販のキクイムシ防除用殺虫剤」です。用途が書かれた製品を使ってください、というところまでが分かる範囲になります。
費用について書いた公的資料は、確認できませんでした。
木材の害虫という点で近いのはシロアリで、そちらの相場はシロアリ駆除は自分でできる?費用の相場や業者の選び方にまとめてあります。ただし作業の中身が同じとは限りません。
5〜7月です。長野県と森林総合研究所の両方が、この時期に成虫が脱出すると書いています。
穴と木くずは、成虫が出てきたときの名残です。つまり木くずを見つけた時点では、もう出たあとということになります。
穴の大きさと場所で切り分けられます。キクイムシの虫孔は直径約2mmの円形で、乾いた広葉樹の辺材部にしか出ません。針葉樹材と心材は食べないとされています。
また「乾燥した材だけを加害するため、屋外では見つかりません」とも書かれています。庭で見つけたなら別の虫です。
順番だけ覚えて帰ってください。
- 市販の殺虫剤は表面に効きますが、木材内部の幼虫には届きません
- 手順は虫孔への注入 → 11月と4月中〜下旬に表面 → 未塗装部の塗装
- 時期が2回なのは、秋に表面近くへ上がり、春に出てくるからです
- 屋外からは来ません。原因は家具や建材の持ち込みです
- 買うときに防虫加工済みを選ぶことが、次の被害を止めます
今日やること:
- 木くずを取り除いて、虫孔の位置と数を控える
- キクイムシ防除用と書かれた殺虫剤を用意し、穴に注入する
- カレンダーに11月と4月中旬を書いておく

穴が床板や柱にあって動かせない、あるいはシロアリとの区別がつかないという段階なら、見てもらうところからになります。

