クロアリの駆除は必要か|日本のアリは建材に穴をあけないと資料は書きます
家の中に黒いアリが並んで歩いている。放っておくと、家が食べられるのでしょうか。
答えは「木材には穴があきません」でした。
森林総合研究所の資料は、日本のアリについてはっきり書いています。建材に自力で穴をあけるアリは、日本にはいないという書き方です。
ただし、例外が1種だけありました。
- 不朽していない建材に自力で穴をあけるアリは日本にいないとされている。シロアリとは別の話
- 例外はイエヒメアリ。「日本に生息するアリの中で最も重要な家屋害虫」とされている
- その被害は食品の加害と精神的不快感、そして病原菌の媒介の2つ
- いますること:体が光っているかどうかを見る。光沢がなければイエヒメアリの可能性

台所に毎日出てきて、片づけても翌日また並んでいる。そこまで来ているなら、巣の場所を見てもらうほうが早いです。
ここが、シロアリといちばん違うところです。
森林総合研究所の濱口京子氏が、専門誌でこう書いています。
このアリは建材に穴をあける性質はもたない(イエヒメアリに限らず、不朽していない建材に自力で穴をあけるアリは日本にはおらず、世界的に見てもカーペンター・アントくらいのものである)。
※出典:濱口京子「日本に侵入したアリ ―特にイエヒメアリについて」『森林科学』38号40〜43ページ(2003年6月・森林総合研究所)。2026年8月29日確認。以下、この章以降の引用はすべて同じ論文です。
不朽していない、というのが条件です。すでに腐って柔らかくなった木は別ですが、健全な建材にアリが自分で穴を掘ることはない、と書かれています。
同じ資料は、前提もこう置いています。
日本には人間社会や環境に深刻な害をおよぼすアリはほとんどいない。ところがアリも他の昆虫同様、侵入種となると話が違ってくる。
かんたんに言うと、問題になるのは外から入ってきた種だということです。
羽アリを見てシロアリかクロアリか迷っている場合は、先に羽アリはシロアリかクロアリかで確かめてください。
その侵入種が、イエヒメアリです。
「家の中に赤くて小さいアリがたくさんいて困る」とすれば、イエヒメアリの可能性が高い。
位置づけも書かれています。
広範な地域でこのように執拗な害を及ぼしているアリは国内では他に例がないため、イエヒメアリは日本に生息するアリの中で最も重要な「家屋害虫」とされている。
熱帯生まれのアリで、古くから貨物船や客船にすみついて広がり、今は南極を除く全大陸に定着しているとされています。日本では1930年より前から沖縄に生息していた記録があります。
「木を食べない」なら何が困るのか。資料は2つに整理しています。
イエヒメアリによる被害は家屋内に限られ、その内容は「食品の加害と精神的不快感」および、日本ではあまり注意が払われていないが「病原菌の媒介者となること」の2点である。
資料が挙げる2つの被害
| 被害 | 中身 |
|---|---|
| 食品の加害と精神的不快感 | 建物内のどこにでも巣をつくり、働きアリが年中徘徊する。よほど密閉性の高い箱にしまわなければ隙間から入り込んで加害する |
| 病原菌の媒介 | 特に病院で懸念される。包帯・食品・滅菌器具の上を歩き回る。オートクレーブ(滅菌用の機械)を生息場所として好むともされる |
出典:同論文より編集部が整理。2026年8月29日確認。
雑食性で、動物性タンパクも非常に好むとされ、食品に限らず昆虫標本まで餌になると書かれています。
ただし、病気が実際に広がった例は確認されていません。
イエヒメアリの媒介によって実際に病気が広がったという報告は見あたらないが、少なくとも実験ではイエヒメアリが複数種の病原菌を媒介しうるという結果がでている
刺されるかどうかも書かれています。「まれに咬んで毒液をぬり軽い痛みや赤斑を生じさせるくらいのことはあるというが、あまり問題とはならない」とされています。刺す虫として恐れる相手ではありません。
体の表面を見ると分かります。
日本ではイエヒメアリの他に8種類のヒメアリ類が見られ、これらはみな体表が滑らかなためツルツルと光って見えるが、イエヒメアリでは頭部と胸部が細かい点刻ですき間なくうめ尽くされているために光沢感がない。
イエヒメアリの見分け
| 見るところ | イエヒメアリ |
|---|---|
| 大きさ | 働きアリの体長2〜2.5mm |
| 色 | 頭部と胸部が赤褐色。腹部はやや濃い |
| 光沢 | 無い(ほかのヒメアリ類はツルツル光る) |
出典:同論文より編集部が整理。2026年8月29日確認。
同じくらい小さくて赤いアリでも、光っていれば別の種類ということになります。
なお、アリとハチは近い仲間です。京都市の保健所の資料は「アリは、ハチの仲間です。他のハチの仲間との違いは、腹部に腹柄と呼ばれる器官があること」と書いています。
被害が「家屋内に限られる」からといって、小さい話ではありません。
購入した家電製品からイエヒメアリが出てきたとする購入者とメーカーとの間でトラブルが生じたり、賃貸マンションやアパートの貸し方と借り方との間でイエヒメアリをめぐってトラブルが生じたり、さらにはイエヒメアリが繁殖したマンションをめぐって売主と買主との間で裁判が行われるなど、かなり深刻な社会問題となりつつある。

「自分の部屋だけの問題ではない」ことがあります。集合住宅なら、管理会社に伝えておく意味はここにあります。
もう1種、名前を知っておくとよいアリがあります。
京都市の保健所の記録によると、アルゼンチンアリは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」の中で特定外来生物に指定されており、他のアリを駆逐し、生態系を変えてしまう可能性があるとされています。
見分けの手がかりは、季節です。
気温の低い時にもかかわらず、活発に動き回り,ブロックの隙間に出入りをしていました。冬季に活発に活動するのは、アルゼンチンアリの特徴の一つです。
※出典:京都市「衛生動物だより」No.021。2026年8月29日確認。
現場の管理者の話も載っています。「数年前から見かけている。夏になると大量に発生し、屋内にも頻繁に侵入してくる」。
かんたんに言うと、冬なのに元気に歩いているアリは、普通ではないということです。
やることの順番は、被害の中身から決まります。
先に準備するもの|密閉できる容器
資料が挙げているのは、密閉性の高い箱です。「よほど密閉性の高い箱にしまわなければ隙間から入り込んで加害する」と書かれています。
市販の薬剤を買う前に、食品の置き方を変えるほうが先になります。動物性タンパクも好むので、ペットフードも対象です。
やってはいけないこと
巣を探さずに見えたアリだけを潰し続けることです。建物内のどこにでも巣をつくるとされているので、出口をひとつ消しても中身は残ります。
もうひとつ、アルゼンチンアリだった場合に自己流で広げることです。特定外来生物なので、生きたまま運ぶ扱いには決まりがあります。判断がつかなければ、地域の保健所に相談してください。相談先の使い分けは害虫駆除はどこに相談するかにまとめてあります。
再発を防ぐ
食品を密閉することと、出入りしている隙間を見つけることの2つです。ブロック塀の隙間に出入りする例が京都市の記録にあります。
業者に頼む判断ライン
巣が壁の中や家電の内部にあると、自分では届きません。購入した家電から出てきた例が資料に載っているとおりです。
費用の考え方は害虫駆除の費用相場に、業者の見方は害虫駆除業者の選び方にまとめました。

片づけても翌日また列ができている。それは巣が残っているということなので、探す作業から替えたほうが早いです。
森林総合研究所の資料は「不朽していない建材に自力で穴をあけるアリは日本にはおらず」としています。木材の被害は基本的に起きません。ただしイエヒメアリの場合は、食品の加害と病原菌の媒介が挙げられています。
家への影響で言えばシロアリです。シロアリは木材を食べますが、日本のアリは健全な建材に穴をあけないとされています。シロアリ側の話はヤマトシロアリとイエシロアリの違いは食べ方にあります。
イエヒメアリの場合、建物内のどこにでも巣をつくるとされています。食べ物を探しに出てくるので、密閉していない食品やペットフードが手がかりになります。
体長2〜2.5mmで頭部と胸部が赤褐色なら可能性があります。決め手は光沢です。ほかのヒメアリ類はツルツル光りますが、イエヒメアリは光沢感がないとされています。
京都市の記録は「冬季に活発に活動するのは、アルゼンチンアリの特徴の一つ」としています。特定外来生物に指定されている種なので、心当たりがあれば保健所へ相談してください。
クロアリを駆除しないとどうなるか。家の木材に穴があくことは、基本的にありません。
不朽していない建材に自力で穴をあけるアリは日本にいない、と資料は書いています。シロアリとはそこが違います。
問題になるのは1種、イエヒメアリです。食品の加害と精神的不快感、そして病原菌の媒介の2つが挙げられ、「日本に生息するアリの中で最も重要な家屋害虫」とされています。
やること
- 木材の心配より先に、食品とペットフードの置き方を見直す
- アリの体が光っているかどうかを見る。光沢がなければイエヒメアリの可能性
- 冬なのに活発なら、アルゼンチンアリを疑って保健所へ相談する
- 見えたアリを潰し続けない。巣は建物内のどこにでもある
- 集合住宅なら、自分の部屋だけの問題として抱えない

「木が食べられる」という心配から解放されたら、次に見るのは台所です。相手が求めているのは食品のほうです。

