イノシシ対策で最強は柵です|石灰やにおいの効果を試した公的資料は「効果なし」
畑や庭が、イノシシに掘り返された。
一番効く方法を知りたくて調べると、石灰、においの資材、ライト、ラジオ、電気柵と、いろいろな方法が出てきます。どれを選べばいいのか、迷いますよね。
そこで、農林水産省・環境省・農研機構(国の農業の研究機関)と、県の資料を読みました。確認したのは2026年10月17日です。
分かったのは、国のマニュアルが「置くだけで来なくなる忌避資材は見つかっていない」と書いていることです。資料が勧めるのは、柵でした。
- 国のマニュアルは、においや光や音の対策を「効果がないか、あっても一時的」と書いている
- においの資材5種は「全く効果を示さない」という県の試験もある。石灰で追い払う効果を試した公的資料は見つからなかった
- 効くのは柵。電気柵は地上20cmと40cmの2段が基本。金網なら目の大きさ10cm
- 柵の補助は、市町村を通して受ける。自分の畑でも、捕まえるには免許か許可が要る

「これを置けば来なくなる」という道具を探すより、柵の張り方を先に知るほうが、むだな出費が減ります。
国のマニュアルは、においや光や音の対策をこう書いています。
農林水産省の「野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】」(令和5年3月)のコラムです。
慣れが生じる対策、例えば光や音や匂いを用いたものは効果がないか、あっても一時的だといわれている。
同じページには、こうも書かれています。
現在のところ、置くだけでイノシシやシカが来なくなる夢のような忌避資材は見つかっていない。
※出典:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】」第3章(令和5年3月、2026年10月17日確認)
このマニュアルは、市販の忌避資材について「公的機関で効果を検証したものではない」とも書いています。作物の収穫期に使える忌避剤は無い、とも書かれています。
においの資材を試した試験は「効果なし」でした
国と県の研究機関は、実際に試しています。
イノシシへの忌避資材を試した公的な研究(2026年10月17日確認)
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| 資料 | 試したもの | 結果 |
|---|---|---|
| 和歌山県 農林水産総合技術センター(平成21年度) | においや味の資材5種、点滅ライト | 5種は「全く効果を示さない」。点滅ライトは効果があったが、続いたのは約1日 |
| 農研機構(平成24年度) | オオカミの尿 | 「忌避効果は皆無」 |
| 島根県 中山間地域研究センター | 忌避剤、点滅灯 | 「継続的な効果は認められませんでした」 |
和歌山県「野生イノシシに対する忌避資材の効果」、農研機構「イノシシ対策に使われているオオカミ尿には忌避効果がない」、島根県「イノシシの生態解明と農作物被害防止技術の開発」。
兵庫県の資料は、イノシシについて「嫌いな臭いは特になく、木酢液やクレオソートの臭いも平気です」と書いています。
かんたんに言うと、においや光で追い払う方法は、試した資料ほど「効かない」と書いています。
石灰で追い払う効果を試した資料は、見つかりませんでした
「イノシシ対策に石灰はどうか」という問いは、多く検索されています。
国・県・研究機関の資料を探しましたが、石灰でイノシシが来なくなるかを試した公的な資料は見つかりませんでした。環境省の資料に「消石灰」は出てきますが、これは豚の病気のウイルスを消毒する話で、イノシシを追い払う話ではありません。
ここからは編集部の見立てです。においの資材が5種とも効かなかった試験がある以上、石灰をまいて来なくなると期待するのは難しいと考えます。 石灰を買う前に、柵を考えてください。
柵の種類によって、イノシシが突破するまでの時間が大きく違いました。
農研機構のサイトに載っている島根県中山間地域研究センターの資料は、柵の種類ごとに試した結果をこう書いています。
試験開始から有刺鉄線と防風ネットは約1 時間で、金網は約2 時間で突破した。一方、トタンとワイヤーメッシュは24 時間以上を要した。
※出典:農研機構サイト掲載「被害防除に効果的な柵」(2026年10月17日確認)
ワイヤーメッシュは、太い鉄線を格子に溶接した金網のことです。
ただし同じ資料は、イノシシは柵の種類に関係なく、慣れや学習で突破する力を持っている、と書いています。島根県の別の資料は、2種類の柵を組み合わせる方法が有効と考えられた、と書いています。
柵の高さと、目の大きさの数字
イノシシは、思ったより高く跳びます。
助走せずに1mもの柵を飛び越える。
国の旧マニュアル(平成26年3月)は、すき間についても書いています。子のイノシシは15cmの格子を通り抜け、大人は20cmほどのすき間をくぐり抜けます。
柵の高さと目の大きさ(公的な資料)
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| 項目 | 資料に書かれた数字 | 資料 |
|---|---|---|
| 金網の柵の高さ | 1.2m以上 | 岡山県(令和2年3月) |
| 金網の上を外へ折り返す柵 | 高さ約1mの金網の上30cmを、外へ20〜30度折り曲げる | 農研機構 |
| 金網の目の大きさ | 10cm格子。15cm格子は子のイノシシがすり抜ける | 農研機構 |
| トタン | 1枚で低ければ2枚つないで1.2mほど | 農林水産省(平成26年3月) |
農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル-イノシシ、シカ、サル(実践編)-」、農研機構「イノシシから農地を守る『金網忍び返し柵』」、岡山県「集落柵設置指導マニュアル」。2026年10月17日確認。
農研機構は、柵の補強のために置いた石は、掘り返しを誘って逆効果だとも書いています。
電気柵の線の高さは、イノシシの鼻の高さに合わせます。
国のマニュアル(令和5年3月)は、イノシシは鼻先で物を探る習性があるので、電線の間隔は20cm以下がよく、段数は2段か3段で十分と書いています。
県の資料の数字を並べます。
電気柵の張り方(公的な資料)
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| 資料 | 段の高さ・段数 | 電圧 |
|---|---|---|
| 鳥取県(平成28年3月) | 1段目20cm、2段目40cm | 5キロボルト以上に保つ |
| 岡山県(令和2年3月) | 20cm間隔で2段を推奨。最上段0.4mほど | ― |
| 兵庫県(2011年) | 20cm間隔で3段が標準 | 5,000ボルト以上を保つ |
| 島根県(令和6年8月) | 30cmや60cmだと、鼻で触らずにくぐり抜ける | 4,000ボルト以上が必要と言われる |
鳥取県「鳥取県版電気柵設置・点検マニュアル」、岡山県「集落柵設置指導マニュアル」、兵庫県「イノシシの被害防止」、島根県中山間地域研究センター「イノシシ対策 防護柵設置マニュアル」。2026年10月17日確認。
かんたんに言うと、段数は2段か3段で資料が分かれますが、いちばん下を地上20cmにする点はそろっています。
島根県は、線を30cmや60cmの高さにすると、イノシシは鼻で触らずにくぐり抜けてしまう、と書いています。
電気柵は、24時間流して、草を刈ります
広島市の広報紙は、電気柵は24時間流しておくことが基本、と書いています。
国のマニュアルは、草が線に触れると電気が逃げるので、草の手入れが要ると書いています。そのうえで、草による漏電の対策が要る電気柵より、金網やワイヤーメッシュの柵のほうが手入れが楽だ、とも書いています。
鳥取県は、ワイヤーメッシュの柵も、月1回以上(収穫前は月2回以上)、地面のきわを中心に点検するよう書いています。
ここからは編集部の見立てです。毎日畑に行ける人は電気柵、草刈りの手間を減らしたい人は金網の柵、という選び方ができます。 組み合わせるとさらに強くなる、と島根県は書いています。
国の補助は、個人に直接ではなく、地域の協議会を通して出ます。
農林水産省の制度の説明(令和5年3月)は、侵入防止柵の支援について、市町村が被害防止計画を作っていることが必要だと書いています。
市町村が独自に補助を出している例もあります。岡山県倉敷市のチラシは、個人の農業者に、柵の資材の購入費の2分の1、年度の上限10万円を補助すると書いています。条件は、守る農地が1,000㎡以上であることと、購入前に手続きをすることです。
費用の目安としては、千葉県の資料(平成23年1月)が、簡易な電気柵の資材費を100mあたり約2万円と書いています。15年前のキットの値段で、送料は別です。
住んでいる市町村に補助があるかは、市町村の農林の窓口で聞いてください。害獣全体の補助のしくみは、害獣駆除の補助金は市町村の「協議会」に出るにまとめています。
自分の畑に出たイノシシでも、自由には捕まえられません。
国のマニュアルは、箱わなや囲いわなでイノシシを捕まえるには、一般にわな猟の免許が要ると書いています。
例外を書いた資料もあります。長野県の資料は、狩猟期間中に限り、塀や囲いのある住宅の敷地内なら、狩猟免許が無くても網やわなで狩猟鳥獣を捕まえられる、と書いています。ただし、囲いの外の畑では、自分の土地でも免許や許可が要るとしています。狩猟期間は地域で違うので、県の窓口で確かめてください。
イノシシに出会ったときは、ゆっくり離れます
環境省の資料によると、イノシシによる人身被害は、2019年度に44件・53人でした。
兵庫県は、出会ったときの動き方をこう書いています。
慌てずゆっくり後ずさりをして、その場を離れてください。
犬を連れているときは、イノシシが近づいてきたらリードを放して避難するよう、兵庫県は書いています。
※出典:兵庫県「イノシシによる人身被害防止について」(更新日2024年12月12日、2026年10月17日確認)
福岡市は、家庭菜園や農地を柵で囲うこと、生ごみや収穫しない野菜をえさにしないよう片付けることを挙げています。
ほかの動物が畑や庭に出るときの市の対応は、害獣駆除は市役所の何課?にまとめています。

柵を張っても、イノシシは学習して弱いところを探します。点検と草刈りを続けられる張り方を選ぶのが、いちばん長持ちします。
公的な資料が勧めているのは柵です。試験では、トタンとワイヤーメッシュの柵は突破されるまで24時間以上かかりました。2種類の柵を組み合わせる方法が有効と考えられた、という島根県の資料もあります。
石灰でイノシシが来なくなるかを試した公的な資料は、見つかりませんでした。においの資材5種は「全く効果を示さない」という和歌山県の試験があります。
いちばん下の線を地上20cmにするのが、資料でそろっている点です。鳥取県と岡山県は20cmと40cmの2段、兵庫県は20cm間隔の3段を挙げています。
国のマニュアルは、光や音の対策は効果がないか、あっても一時的と書いています。和歌山県の試験では、点滅ライトの効果は約1日でした。
国の支援は、市町村が被害防止計画を作っていることが前提で、地域の協議会などを通して出ます。倉敷市のように、個人の農業者に資材費の2分の1(上限10万円)を補助する市もあります。市町村の窓口で聞いてください。
一般には、わな猟の免許か、捕獲の許可が要ります。長野県は、狩猟期間中の、塀や囲いのある住宅の敷地内だけは免許が無くても網やわなで捕まえられると書いていますが、囲いの外の畑は対象外です。
国のマニュアルは、置くだけでイノシシが来なくなる資材は見つかっていない、と書いています。においの資材を試した県の試験では、5種とも効果がありませんでした。
資料が勧めるのは柵です。電気柵はいちばん下の線を地上20cmに、金網なら目を10cmにします。
柵は、張ったあとの点検と草刈りまで続けて、はじめて効きます。
最後に、やることを3つに絞ります。
- においや光の道具を買う前に、柵を考える
- 電気柵なら20cmと40cm、金網なら高さ1.2m以上と目10cmを守る
- 市町村の農林の窓口で、補助があるかを聞いてから買う

