賃貸のネズミは誰の責任か|引っ越し費用・家賃減額を条文で確かめる
駆除しても改善せず、引っ越しを考え始めた方に、先に結論をお伝えします。
引っ越し費用そのものを大家に負担させる条文はありません。ただし賃料の減額と契約の解除については、民法にはっきり書かれています。ここを混ぜずに使い分けると、交渉の足場が変わります。
この記事では2026年8月18日にe-Gov法令検索で条文を確認し、確実に言えることと交渉になることを切り分けました。
- 引っ越し費用を大家に負担させる条文はない。請求する余地はあるが確実ではない
- 一方で賃料は「減額される」と条文に書かれている(民法611条1項)
- 住める状態でないなら契約を解除できるとされている(民法611条2項)
- やること:被害の記録を残す → 管理会社へ書面で連絡 → 確実な手段から順に使う

減額や解除を持ち出す前に、被害の状態を書面で残しておくと話が早く進みます。所見を出せるかは最初の問い合わせで聞けます。
ここを先に確定させておくと、期待とのずれを避けられます。
民法には賃料や修繕、解除についての定めはありますが、「賃借人が引っ越す費用を賃貸人が負担する」と直接書いた条文はありません。
請求する道がないわけではありません。民法415条1項は、債務者が債務の本旨に従った履行をしないときなどに、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求することができるとしています。転居費用をこの「損害」として主張する余地はあります。
ただし同項にはただし書きがあり、債務者の責めに帰することができない事由によるときは請求できないとされています。認められるかどうかは事案ごとの判断になります。

「引っ越し代は大家持ちです」と言い切っている情報は、根拠を確かめてから受け取ってください。
この記事は法律相談ではありません。 金額や見通しの判断が必要な場合は、弁護士や自治体の無料法律相談をご利用ください。
条文の書きぶりによって、確実さに段階があります。
ネズミ被害で使える手段と根拠
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| 手段 | 根拠 | 条文の書きぶり | 確実さ |
|---|---|---|---|
| 賃料の減額 | 民法611条1項 | 賃料は…減額される | 高い |
| 契約の解除 | 民法611条2項 | 賃借人は、契約の解除をすることができる | 高い |
| 修繕の実施 | 民法606条1項 | 賃貸人は…修繕をする義務を負う | 高い(例外あり) |
| 引っ越し費用 | 民法415条1項 | 損害の賠償を請求することができる | 事案による |
e-Gov法令検索で確認した条文の要旨です(2026年8月18日確認)。適用の可否は個別の事情によります。
上の3つは条文に効果が書かれているのに対し、引っ越し費用だけは「請求できる」であって「認められる」ではありません。ここが分かれ目です。
交渉するなら、確実さの高い順に使うほうが話が進みます。賃料の減額と修繕の請求を先に出し、それでも解決しないなら解除という順番です。
民法611条1項は、賃料が減額されると書いています。
条文の要旨はこうです。賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
注目したいのは語尾です。「減額を請求できる」ではなく「減額される」と書かれています。
ここからは編集部の見方です。条文上は当然に生じる効果として書かれていますが、減額の割合そのものは条文に書かれていません。どの部屋がどれだけ使えなくなったかの評価が必要になるため、実務では当事者の話し合いになります。
条件も明示されています。賃借人の責めに帰することができない事由によるものであること、という点です。入居者側の管理に原因がある場合は当てはまりません。

「家賃を下げてください」ではなく「条文上こうなっています」から入ると、話の性質が変わります。
民法611条2項に、解除できると書かれています。
条文の要旨は、賃借物の一部が使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる、というものです。
似た定めが民法542条1項3号にもあります。債務の一部の履行が不能である場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときは、催告することなく直ちに契約の解除をすることができるとされています。
解除できれば、契約期間の途中でも出られることになります。違約金や早期解約金の扱いも、通常の中途解約とは前提が変わる可能性があります。
ただし「目的を達することができない」かどうかの判断は、個別の事情によります。被害の程度、居住への支障、改善の見込みなどが関係するため、この記事で線引きを示すことはできません。
判断に迷う段階なら、契約書を持って法律相談へ行くのが確実です。
条文の要件を満たすかどうかは、記録がないと示せません。
611条1項には「賃借人の責めに帰することができない事由」という条件があります。入居者側に原因がないことを示す材料が要る、ということです。
残しておきたい記録
| 記録 | 目的 |
|---|---|
| 日付が分かる写真・動画 | 被害の程度と時期を示す |
| 被害箇所のメモ | どの部分が使えないかを示す |
| 管理会社への連絡の履歴 | いつ伝え、どう対応されたかを示す |
| 駆除を実施した記録・領収書 | 自分で対応した事実と費用を示す |
| 建物の構造に関するやりとり | 侵入口が建物側の問題であることを示す |
どの記録が有効かは事案によります。上記は条文の要件から編集部が整理したものです。
管理会社への連絡は、書面やメールなど残る形で行ってください。電話だけだと、伝えた事実が後から確認できません。

「言った・言わない」になった時点で、条文の話まで辿り着けなくなります。
同じ建物の他の部屋でも発生している場合、その情報も建物側の問題を示す材料になります。
連絡しても対応されない場合、先に手を打って記録を残す選択肢があります。
放置すると被害が広がり、賃料減額を主張する根拠も曖昧になっていきます。自分で駆除を手配し、実施した事実と費用を残しておくほうが、後の話し合いで出せる材料が揃います。
自分で手配するかの判断
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| まだ管理会社へ連絡していない | 先に連絡する。順番を飛ばさない |
| 連絡したが対応されない | 記録を残したうえで自分で手配する選択肢 |
| 被害が進行している | 待つ不利益が大きい。手配を検討 |
| 建物の構造に原因がありそう | 業者の所見を記録に残す価値がある |
判断の目安は編集部の整理です。
駆除費用を誰が負担するかという論点は、賃貸の害虫駆除費用は誰が払うかで詳しく扱っています。金額の目安はネズミ駆除の料金相場と作業内容別の費用を参照してください。
業者に依頼するなら、侵入口がどこにあるかの所見を書面でもらえるかを確認しておくと、記録として使えます。

大家が動いてくれず、侵入口の所見を書面でもらえる会社を自分で探すことになった。書面を出せるかどうかは、問い合わせの時点で聞けます。
請求する余地はありますが、認められるとは限りません。
民法415条1項は債務不履行による損害賠償を定めており、転居費用をこの損害として主張する道はあります。ただし同項には債務者の責めに帰することができない事由による場合を除くというただし書きがあり、判断は事案ごとになります。
条文に時期の定めはありません。
民法611条1項は、使用収益できなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されると定めていますが、割合や起算点は書かれていません。実務では当事者の話し合いになるため、被害の記録を残しておくことが重要です。
契約による定めと、解除の可否によって変わります。
民法611条2項は、残存部分のみでは賃借の目的を達することができないときに解除できると定めています。これに当たるかどうかは個別の事情によるため、契約書を持って法律相談で確認するのが確実です。
原因がどちらにあるかで扱いが変わります。
民法606条1項は賃貸人に修繕義務を定める一方、賃借人の責めに帰すべき事由による場合は例外としています。建物の構造や侵入口の状態が関係するため、業者の所見や写真を記録として残しておいてください。
金額や解除の判断が絡むなら検討する価値があります。
この記事は条文の内容を整理したもので、法律相談ではありません。自治体が無料法律相談を実施している場合もあるため、まずはお住まいの自治体の窓口をご確認ください。
賃貸のネズミ被害では、条文に書かれていることと交渉になることを分けて考えてください。
賃料の減額と契約の解除は民法に定めがあります。一方で引っ越し費用は、損害賠償として請求する余地はあるものの、認められるかは事案によります。
まず被害の記録を残し、管理会社へ残る形で連絡してください。そのうえで確実さの高い手段から順に使い、判断に迷う場面では法律相談を挟むのが確実です。

大家が動かないまま、自分で駆除するしかなくなった。その場合の金額を知っておくと交渉の材料にもなります。

