ムクドリ対策は音の種類で決まります|3日で5,000羽が5羽になった記録
夕方になると、決まった木に大群が戻ってきます。
鳴き声とフンで、下を歩けなくなります。
「音で追い払える」という話をよく見かけます。スピーカー、忌避音のCD、超音波の装置。
では、それは効くのか。
自治体の資料を読むと、「音」がひとつの意味で使われていませんでした。
そして浜松市が、4年かけて負け続けた記録を公開していました。
- 自治体が使う「音」は3種類あります。ディストレスコール/不規則な音/特殊波動防除装置
- 鳴らし続ける音は慣れられます。浜松市は「いずれの対策にもムクドリは慣れてきて」と書いています
- 市川市が使うのは拍子木の「不規則で乾いた音」です
- 強剪定はイタチごっこになりました。木が丸坊主になり、芽が出れば戻ってきます
- 数字が出ているのは長野方式だけ。3日で5,000〜6,000羽が5羽になりました
- やること:市街地に来る11〜2月に備える → フンは水で濡らして片づける

毎年おなじ木に集まるのは分かったけれど、うちの敷地でできることが分からない。そこで止まっている人は、現地を見てもらうところから始められます。
まず、言葉を分けます。
自治体の資料に出てくる「音」は、次の3つです。
自治体が使っているムクドリ対策の音(各公式資料・2026年9月9日確認)
← 横にスクロールできます →
| 種類 | 中身 | 使っているところ |
|---|---|---|
| ディストレスコール | 鳥が危険を察知したときに出す声(悲鳴)をスピーカーで流す | 浜松市・新潟市(忌避音CDの貸し出し) |
| 不規則な音 | 拍子木の「カン!カン!」、爆竹 | 市川市・長野市 |
| 特殊波動防除装置 | 高速パルスによる衝撃波を発する装置 | 浜松市 |
分類は編集部の整理です。各自治体の記載から抜き出しました
この3つは、効き方が違います。
かんたんに言うと、「音で追い払える」とだけ言われても判断できません。
どの音のことなのかで、答えが変わります。
浜松市の土木部が、ムクドリ対策の記録を論文にして公開しています。
タイトルはムクドリとの攻防の日々です。
平成21年7月から中心市街地に大群が来るようになり、街路樹をねぐらにされました。
最初の時期について、こう書かれています。
平成21年度から試行錯誤的に,ディストレスコール,剪定,木を叩く,木酢油(匂い)など,いろいろな対策を実施している。ここで,ディストレスコールというのは,鳥が危険を察知したときに出す声,いわゆる悲鳴をスピーカーで流し,ムクドリをビビらせるものだ。
結果はこうでした。
しかし,これらのいずれの対策にもムクドリは慣れてきて
論文はこの時期を「第1ラウンド」と呼び、結果を「勝者ムクドリ」と書いています。
音も、剪定も、匂いも、まとめて慣れられています。
ただし、忌避音を貸し出している自治体もあります
新潟市は、自治会などに忌避音CDを貸し出しています。
ムクドリの忌避音(警戒する時に鳴く声)を流すことで、集団が拡散することがあります
注目したいのは書き方です。
「効きます」ではなく、集団が拡散することがあります。
条件も付いています。
効果のためには大きなボリュームで流す必要があり、使用の際は近隣への注意が必要
大きな音を出し続けることになります。
ムクドリの鳴き声がうるさくて困っている場所で、別の大きな音を鳴らすことになる。ここは考えどころです。

騒音に困って調べていたのに、対策のほうも大音量でした。
市川市の説明が、いちばん具体的です。
ムクドリは突然の大きな音を嫌うため、拍子木による「カン!カン!」という不規則で乾いた音
鍵は「不規則」です。
スピーカーから同じ音が流れ続ければ、鳥は「危なくない」と学びます。浜松市が慣れられたのはここです。
いつ鳴るか分からない音は、学習しにくい。
市川市は光も使っています。
携帯型鳥獣対策用LED照明の日中による追い払い
拍子木とLED照明の2つで追い払う形です。
ただし市は住宅街まで来ません
市川市はこう明記しています。
職員が住宅街等に出張する対応は行っておりません
自治体が動くのは、駅前や公園などの公共の場所までです。
自宅の敷地は、自分で手を打つことになります。
要確認:超音波の効果を書いた公的な資料は、確認できていません。浜松市が使っているのは「高速パルスによる衝撃波を発する特殊波動防除装置」で、超音波とは書かれていません。市販の超音波グッズについて、公的資料で効果を確かめられたものはありませんでした。
音の次によく出てくるのが、木を切る方法です。
浜松市は平成24年度に強剪定をやりました。第2ラウンドです。
対策としてねぐらとなった樹木の強剪定を実施すると,ムクドリは強剪定していない別の樹木に移動し,その繰り返しにより強剪定の範囲が拡大する,というイタチごっこ状態に陥ったことである。
木を切ると、隣の木へ移る。そこも切ると、また隣へ移る。
その先はこうなりました。
その結果,広範囲の樹木が丸坊主になり,景観や緑陰形成機能を喪失し,環境面での配慮に欠けるとういうご批判,また,時間の経過とともに,芽が出て葉が伸びて再びねぐらとなる,という問題が発生した
木を切っても、芽が出れば戻ってきます。
この年も「勝者ムクドリ」でした。
剪定が有効とされる場面もあります
大阪府は、ねぐら対策として剪定を挙げています。
竹藪ならば間伐・樹林であれば枝打ちすることも有効です(下刈りも有効)
新潟市も「ねぐらや集結場所が樹木の場合、枝の剪定が効果的です」としています。
かんたんに言うと、相手が竹やぶや林なら間引く意味があるということです。
浜松市が苦しんだのは、逃げ場になる街路樹が並んでいる市街地でした。同じ「剪定」でも、場所が違えば結果が変わります。
浜松市は平成28年1月、長野市でムクドリの追い払いに成功した中村浩志氏に教えを受けます。信州大学名誉教授で、元日本鳥学会の会長です。
基本方針は2つでした。
①人間は怖いものだと思わせる(決してなめられてはいけない)②中途半端な対策ではダメで人海戦術により徹底的に追い払う
具体的な対策も書かれています。
- 対策1:木の先端にタカやフクロウ等の猛禽類のはく製を設置して、拡声器により猛禽類の鳴き声を絶妙なタイミングで鳴らす
- 対策2:木の先端にひもをつけて揺する
- 対策3:木の先端にストッパー付きのひもをつけ、これに沿ってロケット花火を飛ばして驚かせる
論文は「長野市での実績としては、対策1によって、ほとんどのムクドリを追い払うことに成功している」としています。
そして、やり方に条件が付きます。
以上の対策を,3日間程度連続して実施することにより,徹底的に追い払うものである
浜松市が2月16日から実施した結果です。
長野方式による追い払いの実測(浜松市・平成27年度)
← 横にスクロールできます →
| 日付 | 飛来数 | 記録 |
|---|---|---|
| 2月16日 | 5,000〜6,000羽程度 | 開始 |
| 2月17日 | 500〜600羽程度 | 効果が高いため大がかりな作戦は終了 |
| 2月18日 | 100羽程度 | 1班で追い払い |
| 2月19日 | 10羽程度 | 1班で追い払い |
| 2月22日 | 5羽程度 | 追い払う前に去ったため終了 |
数値は論文の記載をそのまま書き写したものです
3日目で100羽、1週間で5羽になりました。
この年の結果を、論文は「勝者浜松市」と書いています。
ロケット花火と爆竹は市の実施例です
対策3にロケット花火が出てきますが、これは市が計画して行ったものです。
住宅地で個人がやると、近隣とのトラブルや火災のもとになります。
論文自身も「対策3は、浜松市での実施は困難と思われる」としています。
完全に追い払うことは難しい、と書かれています
論文の結びに、5つの総括があります。そのうち2つが重要です。
③ ムクドリを完全に追い払うことは非常に困難で,多大な労力を必要とする。
④ ムクドリを,歩行者や店舗への影響の少ないムクドリ誘導目標エリア内に追い込むことは,比較的容易である。
消すのは難しいが、行き先を決めるのはできる。
平成27年度に特殊波動防除装置を使ったときも同じでした。中心市街地への侵入防止は「あえなく失敗に終わった」一方、誘導と追い払いには成功しています。

「いなくなる」ではなく「別の場所へ動いてもらう」が、資料の言っている勝ち方でした。
ムクドリは1年中同じ場所にいるわけではありません。
市川市が時期を書いています。
7~10月頃
11~2月頃市街地に大群でねぐらを作ります
大阪府は規模の移り変わりを書いています。
初秋から次第に統合して規模が拡大し晩秋から初冬には最大となり数千羽を超えることも珍しくありません
春には夫婦のペア単位に分散し、大集団ねぐらは解消していきます
新潟市は繁殖期を「3月下旬から7月の間」とし、群れは「1万羽に及ぶこともあります」としています。
ムクドリの1年(市川市・大阪府・新潟市の記載から)
| 時期 | 状態 |
|---|---|
| 3月下旬〜7月 | 繁殖期。ペアに分かれ、大集団のねぐらは解消していく |
| 7〜10月 | 群れになる。初秋から次第に統合して規模が拡大 |
| 11〜2月 | 市街地に大群でねぐら。晩秋から初冬に最大 |
3つの自治体の記載を編集部が並べたものです
かんたんに言うと、困るのは秋から冬です。
春に静かになっても、対策をやめれば秋にまた戻ります。
フンの片づけ方
乾いたフンは、掃くと粉になって舞います。
自治体がふんの片づけに指定しているのは水で、目的は消毒ではなく飛散を止めることです。手順は鳩対策のカビキラーは浴室用ですにまとめてあります。
捕まえることはできません
市川市の記載です。
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」により、野生鳥獣をむやみに駆除したりすることは禁止されています
追い払いはできますが、捕獲や殺傷には許可が要ります。巣の扱いや追い払いの時間帯は害鳥駆除で捕獲はできませんで扱っています。
音の種類によります。
鳴らし続けるタイプは慣れられます。浜松市は平成21年からディストレスコール(悲鳴の再生)を使いましたが、「これらのいずれの対策にもムクドリは慣れてきて」と記録しています。
一方、新潟市は忌避音CDを自治会へ貸し出しており、「集団が拡散することがあります」としています。ただし「大きなボリュームで流す必要」があります。
市川市が使っているのは拍子木の「不規則で乾いた音」です。
ねぐらにさせないことが先です。
鳴き声そのものを静かにする方法は、公的資料にありません。
浜松市の記録では、追い払いは3日間程度連続して徹底的にやることが条件でした。1回やって終わりでは戻ってきます。
なお、忌避音を流す方法は自分たちも大きな音を出すことになるので、近隣への影響を先に考えてください。
乾かす前に、水で濡らして片づけます。
乾いたフンを掃くと粉になって舞います。詳しい手順は鳩対策のカビキラーは浴室用ですにあります。
そのうえで、止まる場所を物理的にふさぐのが本筋です。フンが落ちる位置は、上にある枝や電線で決まります。
猛禽類のはく製と鳴き声が、実際に使われています。
長野方式の対策1が「木の先端にタカやフクロウ等の猛禽類のはく製を設置して、拡声器により猛禽類の鳴き声を絶妙なタイミングで鳴らす」です。
浜松市の論文は「長野市での実績としては、対策1によって、ほとんどのムクドリを追い払うことに成功している」としています。
ただし置きっぱなしにすると慣れられます。厚木市は追い払い器具について「設置位置や器具の種類を頻繁に変える等の工夫」を挙げています。
規模によって、個人で対応できる範囲を超えます。
新潟市は群れが「1万羽に及ぶこともあります」としています。浜松市でも平成27年度の飛来数は10,000羽程度と推測されています。
駅前や公園など公共の場所は自治体が対応します。ただし市川市は「職員が住宅街等に出張する対応は行っておりません」と明記しており、住宅地は自分で手を打つことになります。
公的な資料で効果を確認できていません。
要確認:市販の超音波グッズについて、効果を示した公的資料は見つかりませんでした。
浜松市が使った「特殊波動防除装置」は高速パルスによる衝撃波を発するもので、超音波とは書かれていません。その装置でも、中心市街地への侵入防止は「あえなく失敗に終わった」と記録されています。
ムクドリ対策で「音は効くのか」を調べると、答えは音の種類で分かれました。
鳴らし続ける音は慣れられます。浜松市は平成21年からディストレスコールを使い、「いずれの対策にもムクドリは慣れてきて」と書いています。
効いているのは予測できない音です。市川市は拍子木の「不規則で乾いた音」を使っています。
木を切る方法はイタチごっこになりました。強剪定した木の隣へ移り、範囲が広がって丸坊主になり、芽が出れば戻ってきました。
数字が出ているのは長野方式だけです。3日間続けて、5,000〜6,000羽が5羽になりました。
そして論文の結びに、こう書かれています。完全に追い払うのは非常に困難だが、行き先を決めて追い込むのは比較的容易だ、と。
やることの順番です。
- 困る時期を知る。市街地に大群が来るのは11〜2月
- 音を使うなら、同じ音を流し続けない。位置と種類を変える
- 忌避音を流す前に、近隣への影響を考える
- 木を切る前に、隣の木へ移るだけにならないか考える
- ロケット花火や爆竹は市の実施例。住宅地で個人がやらない
- フンは乾かす前に水で濡らして片づける

自治体が動くのは駅前や公園までで、住宅街は自分で手を打つことになります。範囲と費用を先に知りたい人は、見積もりから始められます。

